石ノ森章太郎『仮面ライダーBLACK』(萬画版)
バッタ男の怪奇な世界旅行。下水道の白い鰐、オペラ座の怪人、中国の野人などを巡る冒険の中、光太郎は己の正体を知る。
同名特撮ヒーローの原作者によるコミック版。世界各地のUMAや超常現象ネタを盛り込み、TVとは趣の違う怪奇活劇になっている。
興味深い点は多いが、作品全体としてはあまり面白くない。大門先輩の説く正義の味方道は中途半端に終わるし、未来人も信彦も前フリなしに登場するなどストーリー構成に疑問が大きい。最終回も唐突(『RX』には繋げようがない終わり方だ)。
- TVの仮面ライダーに感化され、バイクとスーツを作って光太郎に「正義の味方」の道を説く大門先輩。光太郎はヘルメットを自作してそれに応えるが、同じヘルメットを被った偽物が現れて殺人を犯し、二人の行動は裏目に出る。露悪的なライダーパロディの様だが、これはBlack原作の一挿話。
- TV版の三神官のようなレギュラー幹部はいない。これは萬画版の初代ライダーもそう。「全体像の見えない巨大組織」を演出するには相応しいが、敵の姿が曖昧だと読者は感情のぶつけ所がないという面もある。
- 記憶喪失の光太郎にとって、戦う理由は正義感ではなく文字通りの「自分探し」。中国で老師的なキャラに巡り合ったと思ったら次の回では自ら手にかけることになる。絶望感が半端ない。
- 巧に渡に司、平成ライダーには「戦う動機が自分でもよくわからない」軸のぶれまくるヒーローがたくさんいて、王道的なヒーロー好きを苛つかせたりもする。
- しかし「自分探しの一環としてのヒーロー活動」というコンセプトは石ノ森漫画の一側面を確かに受け継いでるのだと、今更ながら再確認。