アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』

ベテラン刑事とロボット探偵が宇宙人(宇宙移民の子孫)殺人事件の謎を追うSFミステリ。
階級制に縛られ、ロボットに職を追われるディストピア下にいくつもの思惑が交錯し、頑固なリアリストと心のない男が緊張感に満ちたパートナーシップを結ぶ。
うん、腐女子の人らが萌えSFだと言ってたのもわかる気がする。敵愾心を滾らせ、理解と共感を諦めた上でパートナーと呼ばねばならない関係性のアツさ。なぜ腕を組んで退場するのか!(ネタバレ)
作者の意図とは無関係だが、「シティ」の格差社会や雇用不安、世間体を気にする家族像などは日本人の姿のようにも見えてしまう。ロボットへの反感と身分への執着から、刑事は幾度も推理を誤るが、その必死さを笑うことは出来ない。彼には妻子があるのだから。

余談

  • 暴動を無血で鎮圧し、発砲より警官の権威を振りかざした方が有効と言ってのけるR・ダニールが超クール。
  • 状況設定の重さが結構胸に堪えている。アトム産まれジェイデッカー育ちの私だが、宇宙人のプレッシャーとロボットが齎す雇用不安を抱えたこの社会状況化で果たしてロボットの肩を持てるだろうか
  • 初期の映司×アンクみたいな緊張感含みの関係が好きな人にお勧めしたいですね。私の脳内ビジュアルは概ね虎徹とバニーちゃんな感じ。本当はR・ダニール赤毛だけど。
  • 来栖川製メイドロボが介護の現場から人を減らした挙句暴動(隠語)に巻き込まれる薄い本ください。
  • 今までマルチ達を介護業者の商売敵だなんて考えたことはなかったんだがなあ……。